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2008年3月10日 (月)

浦島太郎

♪むっかしー むっかしー 浦島はー
 助けた亀に連れられてー
 竜宮城に来てみればー
 絵ぇーにも描けない 美しさー♪

竜宮城で、約3年の月日を過ごした太郎は
酒池肉林の日々にも飽き
そろそろ故郷が恋しくもなったことだし
家に帰りたいと乙姫様に申し出ました

すると、残念そうな表情をした乙姫様が
「これはおみやげですが
 決して開けてはなりませんよ」と言いながら玉手箱を太郎に渡しました
その瞬間、太郎の脳裏にまるでフラッシュバックのように
玉手箱を開けると煙が上がり、それを浴びた太郎が
みるみる内に老人に変わっていく姿が浮かびました

そうです
太郎はデジャブーを見たのです

「いや、この玉手箱は受け取れません」と断ると
「どうしてですか?」と乙姫様
「この中身は煙で、それを浴びた私は老人になってしまうんでしょ?」と言うと
「ご存じでしたか・・・そうです、実はあなたがここで過ごした日々は3年ですが
 地上では700年経っているのです・・・
 その700年分の時間をこの玉手箱に閉じこめてあるのです」
「な、700年!?」
「そうです・・・ですから、あなたが地上に戻っても誰もあなたを知る人はいないのです・・・
 ですから、お引き留めしたのですが・・・」
それを聞いた太郎は考えた
確かに地上に戻っても親兄弟どころか、知ってる人間は一人もいない
だから、この竜宮城で余生を過ごすのも悪くはないかもしれない
しかし、700年後の地上というものにも興味がある・・・
玉手箱を開けさえしなければ、今の若いままの姿で700年後の世界を過ごすことができる・・・

「分かりました
 でも、私はやはり人間ですので、どうしても地上に戻りたいと思います
 思いますが、一人ぽっちでは寂しいので
 どうか乙姫様も一緒に来て頂けませんか?」

太郎の考えた作戦はこうです
700年後の地上に興味はあるが
竜宮城での暮らしにも未練がある
地上に戻ってみて、やはり竜宮城の方がいいと思ったら
また乙姫様に連れてきてもらえばいいや
一人で戻ったんじゃ、海の底にある竜宮城に来るに来られなくなってしまう

太郎の申し出に少し迷った末に乙姫様は
「分かりました・・・
 こうなったのも、元はと言えば私に責任があります
 私は亀ですので、1万年の寿命があります
 あなたが地上で過ごせるのも後50年程度ですので
 その間、私がおつきあいしましょう・・・」


こうして、太郎とまた亀の姿になった乙姫様は700年後の地上に戻りました

700年前に後にした、太郎の故郷であるのんびりした海岸はすっかり様変わりをし
今や高層ビルの建ち並ぶ近代的なベイフロントになっていました
その見たこともない背の高い建物に太郎はびっくりしましたが
元来、好奇心旺盛な太郎です
驚きながらもこれからのことを考えるとわくわくもしました

乙姫様が竜宮城から持ち出した金銀財宝を少しずつ売って
太郎は竜宮城で過ごした日々と同じように
酒池肉林の日々を送りました
何しろ、鯛やヒラメが人間の姿を借りて接待するのではなく
本物の若い人間の娘が、太郎に群がってくるのです
太郎がその魅力に溺れないわけがありません
そして毎晩の豪遊っぷりに
乙姫様が持ってきた金銀財宝も
あっという間に底をついてしまいました

金も無くなり遊ぶに遊べなくなった太郎は
亀の姿である乙姫様に
「地上の生活にも飽きたことだし、竜宮城に戻りませんか?」と話しかけると
甲羅の中に引っ込めていた首をニョキッと出し
深いため息とともに乙姫様はこう答えました
「そう来ると思ったわ・・・
 最初からそのつもりで私を連れてきたんでしょ?
 でもね、私が竜宮城に戻るためには
 また子供達にいじめられて、誰かに助けられるか
 あなたが亡くならなければなりません
 ちなみに、あなたが私を助けてもあなたは竜宮城へは戻れませんよ
 一度玉手箱にあなたの時間を閉じこめてしまいましたからね
 今さらそれにこれからの時間を追加することはできませんから」
と冷たく言い放つと同時にまた甲羅の中に首を引っ込めてしまいました

竜宮城に戻ることを諦めた太郎は
しかたなく生活費を稼ぐために働き出しましたが
身に染みついた遊び癖は抜けず
みるみる内に借金地獄に堕ちていきました

連日の取り立て
それを忘れるかのように酒に溺れる日々

「おーい、酒買ってきてくれよー乙姫様ぁ~」
「亀の姿で買い物になんて出られるわけないでしょっ!」
「また乙姫様の姿に戻ればいいじゃーん」
「地上では人間の姿に戻れないのっ!
 ったく、何度同じ事を言わせれば気が済むのよっ!
 っていうか、自分で買いに行きなさいよっ!!」
毎日のように続くこんな会話や
荒んだ生活に乙姫様もすっかり嫌気がさして
自分自身が竜宮城に帰りたくなっています

しかし、こんなテレビゲームだーパソコンだーの時代に
はたして子供達が棒で突っついたり蹴っ飛ばしたりなんていうアナログな方法で
自分をいじめてくれるだろうか?
いきなりスタンガンかなんかで殺されたりしないだろうか?
運良く、いじめてくれる子供達がいたとしても
さらに、それを助けてくれるような心優しき人間がいるだろうか?
考えるだけでも、暗澹たる気持ちになります
残るは、太郎が死ぬことだけです

「ねぇ、あんたもさこんな生活続けてもしょーがないでしょ?
 いっそのこと死んじゃえば?
 どうせ、あんたは竜宮城には戻れないんだし
 あんたが死ねばあたしは戻れるんだからさぁ
 ねぇお願いだから死んでちょーだい」
乙姫様のこの言葉に、太郎の張りつめていた糸がプチッと切れました
「あー分かったよっ
 オレが死ねばいいんだろ?オレが死ねばっ!
 元はと言えばオレがお前を助けたからこんなことになったってーのに
 そのオレに死ねだもんな~
 やってらんねーよ」
「別に助けてくれって頼んだわけじゃないわよっ
 あんたが勝手に助けたんじゃない?
 ガキ相手だからって強がっちゃってさ
 あれが現代のヤンキーやチーマーみたいな連中だったらどうせ見て見ぬ振りでもしたんでしょ?」
もう売り言葉に買い言葉状態です
「あーそうさっ!あーそうさっ!
 もういいや
 何もかんもイヤんなった
 どうせオレはガキ相手にしか強がれないチキン野郎だよ
 だから、自殺なんてできやしないんだから
 お前がオレを殺せっ! 
 さぁ殺せっ!」
そう開き直って太郎は床に大の字になって寝ころびました
「こんな姿の私にどうやって殺せって言うのよっ!」
亀の姿の乙姫様は
甲羅の下から手足を出してそれをバタバタさせながら言い返します
「こんな手足じゃ包丁1本持てないわよっ!」
「うっせーっ!
 何でもいいから殺せっ!
 さぁ早く殺せっ!」
その時、乙姫様はひらめきました
「そうだ、あんた玉手箱はどこにしまった?
 あれを使えば、あっという間に老人になって死ねるわよ
 それだったら苦しまないで死ねるんじゃない?」
自分の思いつきを嬉しそうに乙姫様は続けます
「ほら、元々あれはそういうためにあるようなもんだし
 あんたが変なデジャブーさえ見なければ、もっと早くにそうなってたんじゃない?
 ねっ?あれ使おうあれ
 どこにしまった?」


「裏ぁしまったろう!!!」


めでたしめでたし♪


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