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2008年3月12日 (水)

昔話

昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんはあるところで、人づてに桃太郎の話を聞いて

「おぉ~うちと同じような境遇の老夫婦が、桃から子供を授かったのかぁ~」

と、感心し、ちょっとだけあらすじを勘違いしているおじいさんは
家に帰って庭に桃の木を植えました。

「ばぁさんや、これで3年経てばワシたちにも可愛い男の子できるぞ」
と意気込んで話すと、ばあさんは

「それより、じいさん、裏の山に入って竹を切ると
 なんでも中から女の子が生まれるそうな
 その方が早くないかえ?」
と、ばあさんもどこかから仕入れたかぐや姫の話しを思い出して伝えると
じいさんは
「いやいや、あれはダメじゃ。手塩にかけて育ててもいずれ月に帰るからのう」
とこっちの話はしっかりと把握しています。

さて、そうこうしているうちに、隣に人が引っ越してきました。
そのお隣さんも同じような境遇で子供のいない老夫婦の2人所帯。

じいさんは、その新しい隣人に、いずれうちには可愛い男の子が出来て
桃次郎と名付けるつもりだということを嬉しそうに話しました。
それを聞いた隣人は
「そっか、んじゃうちも何かを植えて子供を授かろう」と思い
隣が桃ならうちは柿にしようと考えました。

隣が柿の木を植えるのを見たおじいさんは
「あほじゃのう、柿じゃ8年待たにゃならんじゃろうが・・・
 それまで、生きていられるんじゃろうか?お隣さんは」と思いましたが
まぁ、隣は隣だと思うようにし、自分んちの庭の桃の木に
毎日毎日かかさず水をやるのでした。
「大きくな~れ大きくな~れ」と。

隣は隣で、桃の木に比べて成長の遅い自分んちの柿の木を隣に見られたくないのか
背の高い板塀を作り、柿の木がおじいさんちから見えないようにしました。

ある日、じいさんはちょっとしたことに気づきました。
隣のウチにはひっきりなしに客が訪れるのですが
裏口から出ていくのか、玄関から出ていくのを見たことがないのです。
おかしいなぁとじいさんは思ったのですが、まぁ隣は隣だと思うようにして
「もっと大きくな~れ、もっと大きくな~れ」と水をやることにしました。

またまたある日、じいさんは不思議なことに気づきました。
なんと、成長が遅いはずの隣の柿の木が板塀より高くなってるじゃありませんか。
もうすでに、じいさんちの桃の木よりはるかに大きくなっています。

どんな手を使って成長させてるのか気になったじいさんは
板塀にこっそりと穴を開け、時間のあるときに観察をしていたのですが
となりのじいさんもただ水をやるだけで、変わった事はしていません。

しかし、ある日じいさんはとんでもない光景を目にするのです。
いつものように隣に客が訪れたと思ったら、その客は血だらけの状態で
となりのじいさんに抱えられて、庭に出てきたのです。
それを覗き穴から見たじいさんは、びっくりして腰が抜けそうになりましたが
それでも目を離すことができずにいると
隣のじいさんは、その血だらけの客を柿の木の根本に置いたのです。

するとどうでしょう!
柿の木の根本から根っこがにょきにょきと伸びて来て
その血だらけで横たわる客にぐるっと巻きつくと
あっと言う間に地面に引きずり込みました。

そうです。この柿の木は人間を養分に成長していたのです。

うわーと今度こそ腰を抜かしたじいさんは這いずるようにして
家に戻り
「ば、ば、ばーさん!ばーさんやっ!」
「なんですか、騒々しいねぇ、どうしました?じいさんや」
と問いかけるばあさんに
もつれた舌でじいさんはこう言いました

「と、と、と、
 隣の柿はよく客喰う柿だ」

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