小説

2008年3月21日 (金)

死亡者リスト

「何だって?」
深夜に突然入った電話を受けたオレの第一声がこれだった

小学校時代からの友人の死を知らせる電話だった
この電話の2時間ほど前に、自宅で自らの命を絶ったらしい

その1週間前にも同じ仲間の一人が死んでいる
それは明かな事故だったのだが、その原因が今回自殺した仲間の不注意によるものだった
それを苦にしての自殺か?

オレは取る物もとりあえず、そいつの家に向かった
道中で、他の仲間にも携帯で連絡をとりあい
とにかく、そいつの家で待ち合わせることにした

家に着くと、警察による現場検証がちょうど終わったばかりのようで
白い布で顔を隠されたヤツが運び出されるところで
これから、署内で安置され検死を待つということだった
一目だけでもヤツの顔を見させてくれと頼むと
白い手袋をした刑事が、布をめくってくれた

この一週間、相当悩んだんだろう
以前のようなふっくらした顔ではなく
すっかりやつれきったヤツの顔がそこにはあった
その無表情に目を閉じてるヤツに向かってオレは呟いた
「ばっかやろう・・・」
ヤツの馬鹿げた責任の取り方と
何もしてやれなかったオレへの言葉だ

涙が出てきた
他の仲間もみな苦悩に満ちた表情で唇を噛みしめている


警察が去って、静まりかえったヤツの家には
不本意な状態で息子に先に逝かれてしまった年老いた両親が力無く座り込んでいた
「オレ達がしっかりしていればこんなことはさせなかったのに
 本当に申し訳ありませんでした・・・」と頭を下げると
「いやいや、君たちにはちっちゃな頃から仲良くしてもらってたのに
 最後の最後にとんだ迷惑をかけちまって・・・
 謝らなきゃいけないのは、こっちの方だ
 悪かったね・・・
 息子のせいで大切なお友達を一人亡くしちゃってね
 息子が逝ったことで、勘弁してくれな・・・」
言葉を返すことが出来なかった

「お茶でも飲んでいってくれ」というご両親の言葉を辞退させてもらって
ヤツの家を後にした

オレ達は不安と悲しみで、そのままばらばらに別れることが出来ず
みんなでオレの家に行くことになった

家に帰り、誰も何も言わない重っ苦しい雰囲気の中
一人のヤツが
「とりあえずさ、前みたいにみんなで酒でも呑んで
 今夜は○○を見送ろうぜ」と提案したから
オレはアルバムを引っ張り出して
1週間前に亡くなったヤツと、さっき自らそいつのとこに向かったヤツの写真を出し
テーブルの隅に置いてから酒を用意し
誰も観ないだろうと思いながらもBGM代わりにとTVのスイッチを入れた


最初こそは、気の重い酒でアルコールが入ってもなかなか酔えなかったが
昔の馬鹿っ話しなど思い出して話してるうちに
みんなの顔にも笑顔が浮かぶようになってきて
少しずつだが、アルコールが回るようになってきた
普段は弱くてあまり呑まないサトウ(仮名)も、今夜はグラスを重ねている
「大丈夫か?」と声をかけると
「呑まずにいられるかよ」とかなり呂律のアヤシクなった口調で返し
「もうさ、勘弁してほしいよな・・・
 ほんの1週間だぜ、1週間
 ほんの1週間のウチに、一生の仲間が二人もいなくなっちまったんだぜ?
 えっ?
 考えられるか?」涙を溜めながらサトウは吐き出すように言った
「もう、お前は飲み過ぎだからやめろ」とオレがグラスを奪おうとすると
「うるせーっ!今夜は○○と○○に説教してやんだ」とグラスを抱えたまま
隅に置いてあった二人の写真を自分の前に持ってきて
「お前らなー・・・」と座った目で写真に向かって語りかけるサトウを止めることが出来なかった


いつの間にか眠ってしまったらしい
点けっぱなしだったTVから流れるザーザーと言う砂嵐の音で目覚めた
まだ酔いの残る頭を振りながら周りを見ると
みな寝付いたようで、唸るようなイビキも聞こえてくる
時計を見ると午前4時ちょっと前だった
水を飲もうと、立ち上がり
ふと見るとサトウの様子がおかしいのに気が付いた
口の周りに吐瀉物をこびりつかせた状態で白目を剥いたままピクリとも動いていない
「おいサトウ!おいっ!」とオレが肩を揺すっても力無く首がガクガク動くだけで
慌ててほっぺたを叩くと、すでに冷たくなり始めたサトウの肌の感触がオレの手に伝わった

【急性アルコール中毒】という言葉が脳裏に浮かんだ
オレは慌てて寝ている残りの二人を叩き起こし
「サトウが・・・サトウが・・・」と伝えると
一気に目が覚めたようで、二人ともガバッと起きあがると
サトウの元に行き、オレと同じように肩を揺らしたが
やはりサトウからの反応はなかった

「し、死んでる・・・」一人が呟くと
「マジかよ・・・・」ともう一人が小さく言った後
「マジかよーーーーーーー!!!」と叫んだ
と、その時だ
ザーザーと砂嵐だけを流していたTVの画面が突然切り替わって
映画のタイトルバックのように、黒背景に白文字がスクロールし始めた
よく見ると、その文字は誰かの名前と住所で
その中に、1週間前に事故で亡くなったヤツの名前が出てきた
「おい見ろよっ!○○の名前が出てるぞっ!」とオレは二人に声をかけた
その○○の名前がスクロールで消えそうになったころ一番下に今度は
自殺した○○の名前が出てきた
「うわっ!今度は○○だっ!」と驚いていると
続けて、サトウの名前が出てきた
「か、仮に死亡者の名前を流してるとしても
 サトウが亡くなったことは、今ここにいるオレ達しか知らないことだぜ・・・」
誰に言うともなくオレが呟くと
さらに今度はオレの名前まで出てきた

驚くとか何とか言うよりも、呆然とした
なぜオレの名前が?
なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ・・・
頭の中には?????が果てしなく渦巻いてきた
事故で死んだ○○
自殺した○○
そしてさっき死んだサトウ
死亡者という関連しかどうしても浮かばなかったオレは
明け方で出るかどうかも分からないTV局に電話してみた

数回のコール音の後、暗く沈んだ男の声が「どうしました?」と言ってきたので
「今、画面に亡くなった友達とオレの名前が出たんですけど
 いったいなんですか?」と言うと
「ご覧になりましたか・・・?
 それでは、貴方のお名前を聞かせてもらえますか?」と言うから
「○○市の○○です」と答えてから続けて
「あれは何ですか?」と問いかけたら、すでに電話は切れていた
その後、何度かけ直しても話し中で、結局その時は答えを得ることはできず
それを知ることになるのは、翌翌日の昼過ぎだった

スクロールされた亡くなった仲間と自分の名前の関連に
どうしても恐怖を隠すことが出来ないオレは
仕事にも外にも一歩も出られずに、家に閉じこもったまま丸1日を過ごし
浅い眠りで疲れた状態のまま、その翌日も外に出られずにいると
誰も来るはずのない家に「ピンポーン」と呼び鈴が鳴った
イヤな予感を振り切るように
「だ、誰?」とドアホン越しに問いかけると








NHKの集金に来ましたー♪
 いやいや、観てないっていうのはナシにしましょうね~
 先日、ご自分の名前を見て電話したでしょ?
 あれはね、未払い者のリストなんですよね~♪
 自分から電話してきたってことは見てたってことですもんねー
 今日こそ払ってもらいますよー」

=========================

楽しんで頂けましたらクリックを〜♪
ネット小説ランキング>現代コミカル部門>「死亡者リスト」に投票

2008年3月12日 (水)

昔話

昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんはあるところで、人づてに桃太郎の話を聞いて

「おぉ~うちと同じような境遇の老夫婦が、桃から子供を授かったのかぁ~」

と、感心し、ちょっとだけあらすじを勘違いしているおじいさんは
家に帰って庭に桃の木を植えました。

「ばぁさんや、これで3年経てばワシたちにも可愛い男の子できるぞ」
と意気込んで話すと、ばあさんは

「それより、じいさん、裏の山に入って竹を切ると
 なんでも中から女の子が生まれるそうな
 その方が早くないかえ?」
と、ばあさんもどこかから仕入れたかぐや姫の話しを思い出して伝えると
じいさんは
「いやいや、あれはダメじゃ。手塩にかけて育ててもいずれ月に帰るからのう」
とこっちの話はしっかりと把握しています。

さて、そうこうしているうちに、隣に人が引っ越してきました。
そのお隣さんも同じような境遇で子供のいない老夫婦の2人所帯。

じいさんは、その新しい隣人に、いずれうちには可愛い男の子が出来て
桃次郎と名付けるつもりだということを嬉しそうに話しました。
それを聞いた隣人は
「そっか、んじゃうちも何かを植えて子供を授かろう」と思い
隣が桃ならうちは柿にしようと考えました。

隣が柿の木を植えるのを見たおじいさんは
「あほじゃのう、柿じゃ8年待たにゃならんじゃろうが・・・
 それまで、生きていられるんじゃろうか?お隣さんは」と思いましたが
まぁ、隣は隣だと思うようにし、自分んちの庭の桃の木に
毎日毎日かかさず水をやるのでした。
「大きくな~れ大きくな~れ」と。

隣は隣で、桃の木に比べて成長の遅い自分んちの柿の木を隣に見られたくないのか
背の高い板塀を作り、柿の木がおじいさんちから見えないようにしました。

ある日、じいさんはちょっとしたことに気づきました。
隣のウチにはひっきりなしに客が訪れるのですが
裏口から出ていくのか、玄関から出ていくのを見たことがないのです。
おかしいなぁとじいさんは思ったのですが、まぁ隣は隣だと思うようにして
「もっと大きくな~れ、もっと大きくな~れ」と水をやることにしました。

またまたある日、じいさんは不思議なことに気づきました。
なんと、成長が遅いはずの隣の柿の木が板塀より高くなってるじゃありませんか。
もうすでに、じいさんちの桃の木よりはるかに大きくなっています。

どんな手を使って成長させてるのか気になったじいさんは
板塀にこっそりと穴を開け、時間のあるときに観察をしていたのですが
となりのじいさんもただ水をやるだけで、変わった事はしていません。

しかし、ある日じいさんはとんでもない光景を目にするのです。
いつものように隣に客が訪れたと思ったら、その客は血だらけの状態で
となりのじいさんに抱えられて、庭に出てきたのです。
それを覗き穴から見たじいさんは、びっくりして腰が抜けそうになりましたが
それでも目を離すことができずにいると
隣のじいさんは、その血だらけの客を柿の木の根本に置いたのです。

するとどうでしょう!
柿の木の根本から根っこがにょきにょきと伸びて来て
その血だらけで横たわる客にぐるっと巻きつくと
あっと言う間に地面に引きずり込みました。

そうです。この柿の木は人間を養分に成長していたのです。

うわーと今度こそ腰を抜かしたじいさんは這いずるようにして
家に戻り
「ば、ば、ばーさん!ばーさんやっ!」
「なんですか、騒々しいねぇ、どうしました?じいさんや」
と問いかけるばあさんに
もつれた舌でじいさんはこう言いました

「と、と、と、
 隣の柿はよく客喰う柿だ」

2008年3月11日 (火)

MATHER

オレはお袋が嫌いだった。
子供の頃から何かにつけて弟とオレを比べ

「おにいちゃんなんだから、しっかりしなさいっ!」
「何で弟の○○ちゃんが分かるのに、アンタが分からないのっ?」
「はぁ、ホントに順番が逆だったらよかったのに・・・」
「いいわよ、老後は○○ちゃんに見てもらうから
 アンタじゃ何されるか、わかったもんじゃないからねっ」

こんなことを年中言われ続けていて、好きになれるはずがない。

だけど、皮肉なことにそんなお袋の面倒をオレが見ることになったんだ。
弟には弟の生活があり、その生活の中にはお袋が入り込める余地がなく
オレには、不幸なことにその余地があった。
何より、オレのカミさんがお袋と意気投合しちゃって
喜んでお袋の面倒を見るって言い出したからだった。

お袋が一緒に住むようになってからというもの
それまでのカミさんとはうって変わって
オレに対して攻撃的になった。
お袋も歳をとってもオレに対する態度は変わらず
カミさんと一緒になってオレを批判する。

ある日、カミさんが子供たちを連れて買い物に出ているときのことだ。
二人きりで、気まずい状態でいるリビングでお袋が突然
「アンタ、あたしは知ってるのよ
 アンタが他の女とよろしくやってるのを」
とニヤッと笑い
「○○さんや、子供達が知ったら悲しむだろうーね~クククク」
と、意味深に笑った。そしてオレに手を差しだし
「はい、口止め料」
と言った。
最近お袋は競馬にこっていて、日曜になるとTVの競馬中継に釘付けで
アツくなってる姿をよくみかけていた。

オレは黙って、財布ごとお袋に渡し「好きなだけ抜けよ」と言った。

口止め料でもあるし、小遣いのつもりでもあった。

それからのお袋は狂ったようにギャンブルに金を注ぎこむようになった。

競馬だけにとどまらずあらゆる公営ギャンブル、パチンコ
フリーのマージャン・・・・
その度にオレに資金の無心をする。
もちろんカミさんのいない所でだ。
その額もシャレじゃすまなくなってきて
オレは店の運営資金にまで手を付けるようになっていた。

ある日、いつものようにお袋がオレに金の無心に来たとき
オレの中の何かが壊れた。

ニタニタと笑うお袋の首に手をかけた。
何も考えられず、ただお袋の首に力を込めた。
そのうちに、子供の頃からの恨み辛みをオレは口に出していた。
「オレだってな・・・ちっきしょー・・・好きでアニキになったんじゃねー よ・・」
などと口走りながら、力を込めていった。
お袋の顔色が段々と青ざめていき
やがて白くなり
口からは泡を吹き
だらんと舌が出て

そしてお袋の身体から力が抜けた・・・

はっと我に返ったオレはまずいっと思ったが手遅れだった。
この手で母親を殺してしまった。

しかし、不思議と罪悪感はなく、ただ今の生活を壊したくない思いだけだった。

オレはすぐにお袋の死体を車に積み込み
近くの山中に埋めに行った。

山の奥深く、獣道もない場所を選び、スコップで穴を掘りお袋の死体を車から出し
穴の中に放り込んだときに、また言いしれぬ怒りが涌いてきて
気が付くとお袋の顔をスコップでめった刺しにしていた。

しばらくその場所で息を落ち着けてから
今では面影もなくなったお袋の顔にオレは土をかけた・・・
車に戻る道を歩きながらオレは身体全体が重いのを感じた。
これが罪の意識をしょうことなんだろうかと思った。

服に付いた泥を払い、出来るだけ冷静を装い家に帰ると
幸いなことにまだ、カミさん達は帰ってきてなかった。
そのまま何事もなかったように過ごすことをオレは決心した。
お袋のことを聞かれたら、ぶらっと出て行ったと言おう。
そして、しばらくしたら母親が帰ってこないと警察に捜索願を出そう。
そうだ、最近少しボケが始まっていたようだと言おう。
金は持ってるから、電車でどっかに行っちゃったのかもって言おう。

よしよし、老人の失踪なんて珍しくないから
きっと警察だって本気で捜査なんてしやしないさ。

良い方へ良い方へと自分の考えを持っていき
務めて冷静になるようにしているうちにカミさん達が帰ってきた。

カミさんも子供達もお袋がいないことを気にしていないようだ。
よしよし、オレもあえて触れないでいよう。

不思議なことに夜になっても誰も何も言わない。
オレもそのことに触れず、その晩は全員が眠りについた。
ただ一人、オレだけがベッドの中で背筋を走る妙な感覚に眠れなかったが。

次の日になってもその次の日になっても誰も何も言わない。
オレは段々全てが勘違いで、夢でも見ていたのかと思うようになってきた。
最初からお袋はこの家にはきていなくて、オレがお袋を殺したことも
何もかもが幻想だったんじゃないだろうか?と思うようになった。

しかし、オレの背筋を走る妙な感覚だけはいつまでたっても消えず
毎晩眠りの浅い夜を過ごしていただけである。

ある日のこと
真ん中の娘が突然不思議そうにオレにこう言った。

「ねぇ、何でいつもおばぁちゃんはお父さんの後ろを付いて歩いてるの?」

オレの全身から血の気が引き
ぞくっとした寒気がオレを襲い
娘の瞳の焦点がオレの後ろに合っているのを確認した途端
オレは夢中で後ろに向かって手を振り回し

「うわぁーーーーーーー勘弁してくれっ!!!!」

と叫んでいた。
するとオレの耳元で「わかった」って声が聞こえ
サササササササッという気配がしたと思ったら
すーっと背筋が軽くなり
そしてお袋がリビングの入口から走り去る後ろ姿が一瞬だけ見えた。

それを見た瞬間全てが分かった

ははーん、なるほど





悪寒オカンが走る」

ってオチだ

2008年3月10日 (月)

浦島太郎

♪むっかしー むっかしー 浦島はー
 助けた亀に連れられてー
 竜宮城に来てみればー
 絵ぇーにも描けない 美しさー♪

竜宮城で、約3年の月日を過ごした太郎は
酒池肉林の日々にも飽き
そろそろ故郷が恋しくもなったことだし
家に帰りたいと乙姫様に申し出ました

すると、残念そうな表情をした乙姫様が
「これはおみやげですが
 決して開けてはなりませんよ」と言いながら玉手箱を太郎に渡しました
その瞬間、太郎の脳裏にまるでフラッシュバックのように
玉手箱を開けると煙が上がり、それを浴びた太郎が
みるみる内に老人に変わっていく姿が浮かびました

そうです
太郎はデジャブーを見たのです

「いや、この玉手箱は受け取れません」と断ると
「どうしてですか?」と乙姫様
「この中身は煙で、それを浴びた私は老人になってしまうんでしょ?」と言うと
「ご存じでしたか・・・そうです、実はあなたがここで過ごした日々は3年ですが
 地上では700年経っているのです・・・
 その700年分の時間をこの玉手箱に閉じこめてあるのです」
「な、700年!?」
「そうです・・・ですから、あなたが地上に戻っても誰もあなたを知る人はいないのです・・・
 ですから、お引き留めしたのですが・・・」
それを聞いた太郎は考えた
確かに地上に戻っても親兄弟どころか、知ってる人間は一人もいない
だから、この竜宮城で余生を過ごすのも悪くはないかもしれない
しかし、700年後の地上というものにも興味がある・・・
玉手箱を開けさえしなければ、今の若いままの姿で700年後の世界を過ごすことができる・・・

「分かりました
 でも、私はやはり人間ですので、どうしても地上に戻りたいと思います
 思いますが、一人ぽっちでは寂しいので
 どうか乙姫様も一緒に来て頂けませんか?」

太郎の考えた作戦はこうです
700年後の地上に興味はあるが
竜宮城での暮らしにも未練がある
地上に戻ってみて、やはり竜宮城の方がいいと思ったら
また乙姫様に連れてきてもらえばいいや
一人で戻ったんじゃ、海の底にある竜宮城に来るに来られなくなってしまう

太郎の申し出に少し迷った末に乙姫様は
「分かりました・・・
 こうなったのも、元はと言えば私に責任があります
 私は亀ですので、1万年の寿命があります
 あなたが地上で過ごせるのも後50年程度ですので
 その間、私がおつきあいしましょう・・・」


こうして、太郎とまた亀の姿になった乙姫様は700年後の地上に戻りました

700年前に後にした、太郎の故郷であるのんびりした海岸はすっかり様変わりをし
今や高層ビルの建ち並ぶ近代的なベイフロントになっていました
その見たこともない背の高い建物に太郎はびっくりしましたが
元来、好奇心旺盛な太郎です
驚きながらもこれからのことを考えるとわくわくもしました

乙姫様が竜宮城から持ち出した金銀財宝を少しずつ売って
太郎は竜宮城で過ごした日々と同じように
酒池肉林の日々を送りました
何しろ、鯛やヒラメが人間の姿を借りて接待するのではなく
本物の若い人間の娘が、太郎に群がってくるのです
太郎がその魅力に溺れないわけがありません
そして毎晩の豪遊っぷりに
乙姫様が持ってきた金銀財宝も
あっという間に底をついてしまいました

金も無くなり遊ぶに遊べなくなった太郎は
亀の姿である乙姫様に
「地上の生活にも飽きたことだし、竜宮城に戻りませんか?」と話しかけると
甲羅の中に引っ込めていた首をニョキッと出し
深いため息とともに乙姫様はこう答えました
「そう来ると思ったわ・・・
 最初からそのつもりで私を連れてきたんでしょ?
 でもね、私が竜宮城に戻るためには
 また子供達にいじめられて、誰かに助けられるか
 あなたが亡くならなければなりません
 ちなみに、あなたが私を助けてもあなたは竜宮城へは戻れませんよ
 一度玉手箱にあなたの時間を閉じこめてしまいましたからね
 今さらそれにこれからの時間を追加することはできませんから」
と冷たく言い放つと同時にまた甲羅の中に首を引っ込めてしまいました

竜宮城に戻ることを諦めた太郎は
しかたなく生活費を稼ぐために働き出しましたが
身に染みついた遊び癖は抜けず
みるみる内に借金地獄に堕ちていきました

連日の取り立て
それを忘れるかのように酒に溺れる日々

「おーい、酒買ってきてくれよー乙姫様ぁ~」
「亀の姿で買い物になんて出られるわけないでしょっ!」
「また乙姫様の姿に戻ればいいじゃーん」
「地上では人間の姿に戻れないのっ!
 ったく、何度同じ事を言わせれば気が済むのよっ!
 っていうか、自分で買いに行きなさいよっ!!」
毎日のように続くこんな会話や
荒んだ生活に乙姫様もすっかり嫌気がさして
自分自身が竜宮城に帰りたくなっています

しかし、こんなテレビゲームだーパソコンだーの時代に
はたして子供達が棒で突っついたり蹴っ飛ばしたりなんていうアナログな方法で
自分をいじめてくれるだろうか?
いきなりスタンガンかなんかで殺されたりしないだろうか?
運良く、いじめてくれる子供達がいたとしても
さらに、それを助けてくれるような心優しき人間がいるだろうか?
考えるだけでも、暗澹たる気持ちになります
残るは、太郎が死ぬことだけです

「ねぇ、あんたもさこんな生活続けてもしょーがないでしょ?
 いっそのこと死んじゃえば?
 どうせ、あんたは竜宮城には戻れないんだし
 あんたが死ねばあたしは戻れるんだからさぁ
 ねぇお願いだから死んでちょーだい」
乙姫様のこの言葉に、太郎の張りつめていた糸がプチッと切れました
「あー分かったよっ
 オレが死ねばいいんだろ?オレが死ねばっ!
 元はと言えばオレがお前を助けたからこんなことになったってーのに
 そのオレに死ねだもんな~
 やってらんねーよ」
「別に助けてくれって頼んだわけじゃないわよっ
 あんたが勝手に助けたんじゃない?
 ガキ相手だからって強がっちゃってさ
 あれが現代のヤンキーやチーマーみたいな連中だったらどうせ見て見ぬ振りでもしたんでしょ?」
もう売り言葉に買い言葉状態です
「あーそうさっ!あーそうさっ!
 もういいや
 何もかんもイヤんなった
 どうせオレはガキ相手にしか強がれないチキン野郎だよ
 だから、自殺なんてできやしないんだから
 お前がオレを殺せっ! 
 さぁ殺せっ!」
そう開き直って太郎は床に大の字になって寝ころびました
「こんな姿の私にどうやって殺せって言うのよっ!」
亀の姿の乙姫様は
甲羅の下から手足を出してそれをバタバタさせながら言い返します
「こんな手足じゃ包丁1本持てないわよっ!」
「うっせーっ!
 何でもいいから殺せっ!
 さぁ早く殺せっ!」
その時、乙姫様はひらめきました
「そうだ、あんた玉手箱はどこにしまった?
 あれを使えば、あっという間に老人になって死ねるわよ
 それだったら苦しまないで死ねるんじゃない?」
自分の思いつきを嬉しそうに乙姫様は続けます
「ほら、元々あれはそういうためにあるようなもんだし
 あんたが変なデジャブーさえ見なければ、もっと早くにそうなってたんじゃない?
 ねっ?あれ使おうあれ
 どこにしまった?」


「裏ぁしまったろう!!!」


めでたしめでたし♪


ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
ネット小説ランキング>現代コミカル部門>「浦島太郎」に投票

2008年3月 9日 (日)

ミラクル【奇跡】

「さぁさぁお立ち会いね
 ご用とお急ぎでないかたは見ていってちょうだいね
 ここに取りぃ出したる石ね
 ただの石じゃないのね
 奇跡を呼ぶ石なの。
 ほらほら、おねぇさん、よーく見てごらん
 キラキラと輝いてるでしょ?ねっ?
 輝く石だけに輝石=奇跡
 (ぷっ)

 はーい、まだ帰らないくださいねぇ〜
 これは単なるつかみなんですからね
 えっ?つかんでないって?
 いいのいいの、ボクだってちょっと前までは
 この石で、どっかんどっかん笑いを取ってたんだから。
 でも今じゃ、もうすっかり落ちぶれちゃってぇ
 笑いのツボが分からなくなってるんだからね。
 覚えてるでしょ?このつぶやくよーなしゃべり?ねっ?
 ぼそぼそとしたしゃべりかた。ねっ?
 まっいいや。誰も覚えて無くても。
 でも、誰かがこれさえ買ってくれりゃ、ボクもまた・・・
 まっボクのことはどーでもいいよね

 で、この石はね、歴代のブレークしたお笑い芸人さんが一度は持ったことのある
 『満座石』って・・・・

 はーい、まだ帰らないでね、たんなるダジャレじゃないんだからね
 本当にそういう名前なんだからね。
 でね、ここんとこ見て、ほらここ
 ねっ、USB端子が付いてるでしょぅ?
 これをお持ちのパソコンに繋いでもらって
 で、ちょろっと覗いてもらえば一目瞭然
 名だたる芸人さんが売れるきっかけとなったキーワードが並んでるんだから
 みんな、この『満座石』を手に入れて世に出たっていう貴重な代物なんだからね。

 よーし、分かったっ!じゃ百聞は一見にしかずだっ!
 今ここで、ちょっとだけ開いて見せるからね

 はいよ、どう?
 これは、ヤンキー漫才で一世を風靡した紳竜さんね
 『体弱いねん』
 で、ツービートさんはこれ
 『コマネチッ』
 でね、ほらこれこそが、ご存じヤスキヨさん
 『怒るでぇしかし』

 ねっ、こーやってキーワードが出てきて
 それを元にみなさん自分なりにね、ふくらましていって
 世に出たってぇわけ。
 ねっ、ここまでいいでしょ?
 もちろん中には出そーになったけど
 どーしても力及ばずでブレークしきれなかった芸人さんもいるけどね。
 例えばこれ
 『ボディービル』
 そう、ブルータスさんね。
 『好きくない』
 そう、サブロー・シローさんね
 『オレがまだ夕焼けだった頃』
 知ってるかな〜知らねーだろーなー
 うん、この人の場合は一応大きくブレークはしたんだけどね
 まぁ、続かなかっただけでね
 結局、最後は自分の持ってる力次第なんだけどね
 とりあえずこーやって一度は世に出る機会をこの『満座石』は与えてくれるんですね。

  で、このどーしても開かないファイルがあるでしょ?
 パスワードを入力しないと開かないファイル。
 このファイルを開くとね、次のキーワードが出てくるってわけなのね。

 どう?お笑い芸人をめざしてるアナタ
 この世にたった一つしかない『満座石』
 買ってみない?ねぇ?
 お代はアナタの魂・・・・」

◇                  ◇

「おい、いいもん手にいれたな、これでオレたちも売れっ子間違いなしだ」

「ばーか、こんなもんで売れるんだったら、誰も苦労なんかしねーよ
 つか、おまえは魂を売っちゃったんだぜ?どーするの?
 魂のない芸人っ!ってキャッチフレーズで売る?高田純二ばりに」

「高田純二か・・・まっそれなりの位置にはいるよな?
 でも、せっかく魂まで売ったんだから、もうちょっと上のポジションがいいな」

「そーだな、せめてタモさんクラスにはなりてーよな?って一人じゃん
 オレの立場がないぞっ!って、何も始まらないうちに怒ったってしゃーないね。
 まっいっか。とりあえず開いてみようぜ、どーせ騙されてると思うけどさ」

「えと、パスワードは a m u t t e rと・・・・」

 『ミラクル』

「・・・・ミラクルって、これをどーしろっつーんだ?
 なんかインスピレーション浮かぶ?これをネタにさ・・・
 ちょっとさ、他の開いてないファイルをも開いてみよーぜ
 ・・・・ダメだ、これっきゃ開かねーや」

「ほーら、言わないこっちゃない。騙されてるんだよ。からかわれたの
 あのさっきのテキ屋のオヤジに」

「ちょっと待てっ・・・・よしっ!分かったっ!今ピーンときたっ!
 んじゃこーしよー『ミラクル』っつーコンビ名にしようっ!
 今までの人は全部ネタだろ?
 でもオレたちのはコンビ名にしちゃえばさ、解散するまでは
 この『満座石』の効果がありそうじゃん。なっそーしよ
 おけっ!んじゃ、オレが『ミラ』でおまえが『クル』どう?・・・・」

◇                  ◇

「どーもー(ぱちぱちぱちぱち)ミラでーす」
「クルでーす」
【二人あわせてミラクルでーす♪】
「♪ボクの名前はミラぼー♪」
「♪ボクの名前はクルぼー♪」
【♪二人あわせてミラクルだー、きーみとぼくとでミラクルだー♪】
「♪ちいさなネタから♪」
「♪大きなネタまで♪」
【♪笑かすコンビだミラクルぼーいーずぅ〜〜〜〜〜〜〜〜♪・・・・・】

「な?あのときに買っておいてよかったろ?今じゃもう
 押しも押されぬビッグスターだよオレたちゃ」

「おー、ホントだな〜何がヒットするかわかんねーよな〜」

「よーし、この調子でがんがんいくぜー!」

◇                  ◇

「ったくよー、ネタはほとんどオレが考えてるんだぜ?
 オレの方がギャラを多く取るのは当たり前じゃねーかよ?」

「何言ってんだよっ!オレのボケがあるから、お客に受けてるんだろ?
 おまえがネタを考えてるったって、オレの天才的なボケがなきゃ、始まらねーんだよっ!!
 んじゃ、何か?おまえは一人でボケて一人で突っ込めるのか?
 だったらやってみろよ!往年のうなづきトリオみたいなくせにっ!
 あぁーーーーー!やめたっ!オレは降りるっ!もうおまえとはやってらんねー!
 一人で勝手にやってろっ!オレはオレで一人でやってくっ!」

「おいおいおい、ちょっと待てよ!おーいって、おーーーーーーーい・・・・
 あーあ、行っちまいやがった・・・まっいずれこーなるだろーなーとは思ってたけどね
 でも、たけしさんや紳介さんみたいに、むしろピンになってからの方が
 ガンガン活躍してる人もいるからな
 あー、でもあの人達は二人ともボケ役か・・・突っ込みが一人で生き残るって・・・
 そだっ!そーいや、きよしさんは突っ込みだったな。しかも、今じゃ議員さんだ!
 よーし、こっからが正念場だっ
 オレもがんばるぞー♪
 この『満座石』がある限り、オレは大丈夫だ。
 まずはテレビショッピングの司会だっ!
 テレビショッピングかいっ?
 風見慎吾路線かいっ?
 あははは

 うーん、やっぱ一人でもやってけそーだぞ♪・・・・」

◇                  ◇

「はぁ、ヒマだ・・・全然仕事がこなくなった・・・
 どーしよ?
 やっぱコンビを解散しちゃったのがいけなかったかな〜
 しかし、あいつはすげーよなー、一人になっても全然勢いが衰えないもんな〜
 やっぱ、ネタって作るより演じる方が難しいんだよな〜
 オレ一人じゃなーーーーんも面白くないもんな〜
 そっか、だから構成作家とかがいるんだな
 ネタを作る才能はあるけど、演じることができなきゃしょーがないもんな・・・
 はぁ・・・これからどーしよ・・・構成作家にでもなるかな・・・
 でも裏方じゃな〜また舞台でスポットライトを浴びたいよな〜・・・
 でもさ、考えてみりゃ、オレの魂を売ってスターへの切符を手に入れたわけじゃない?
 それが、どーしてあいつが残って、オレが落ちなきゃいけないんだ?
 なんだか、めちゃめちゃ悔しくない?
 なーーーんて一人で愚痴ってもしょーがないか
 あいつにゃ元々才能があったってこと
 オレには才能がなかったってこと・・・」

「えー、毎度おなじみの魂交換でーす♪」

「おわっ!な、何だ突然っ!」

「えー、ご不要になりました、腐った魂、壊れた魂、賞味期限の切れた魂を
 アナタの願いと交換しまーす♪」

「・・・・だ、誰?」

「誰って、毎度おなじみ魂交換っていやーあなた普通、悪魔でしょ?あ、く、ま。
 それとも天使が魂をくれっ!なんて言う?」

「えっ?天使がって・・あ、悪魔?悪魔っていやー普通は
 こー、なんつーのかな、黒い衣装にマントかなんかしちゃって
 手には槍みたいなのを持ってるもんじゃないの?」

「古いね〜おにぃさんも。今時そんなのは流行らないの。
 でもほら、矢印のしっぽだけはあるでしょ?ほら。ねっ?
 まっいいや
 で、どう?魂を売ってみる気はない?
 あなたの願いをかなえちゃうよー♪」

「かなえちゃうよー♪って、何だかずいぶんと軽い悪魔だな〜いまいち信憑性に欠けるけど
 で、何でもかなえてくれるの?」

「あいよ♪かなえちゃうよ〜」

「じゃさ、もう一度オレが売れっ子になるよーにして♪」

「あら?そんな簡単なことでいいの?ちょっと待ってね〜
 -------ありゃ?おにいさん、魂ないじゃない?
 ありゃりゃりゃりゃりゃー、『満座石』を手にいれるのに売っちゃったんだー
 だめだこりゃ。んじゃーまたねーって、もう、会うこともないか・・・」

「ちょっと待って!ねっ、ここで会ったのも何かの縁じゃない?
 魂がダメならタマキンでどう?二つあるから一つ持ってっていいよ」

「タマキンって・・・・たくしょーがないねー
 よっしゃ、んじゃ今日は特別大サービス♪ってもタマキンをもらってもしょーがないから
 おにぃさんがまた復活するためのヒントをひとつだけあげる♪
 おにぃさんはさ、何で魂を売っちゃったの?」

「何でってさっきも言ったけど、この『満座石』を手に入れるために」

「でしょでしょ?ほーら、もうこれで分かったでしょ?じゃねっ ちゃお〜♪」

「ちゃお〜って、ちょっと待ってよー ちょっとー・・・・
 あーあ、行っちゃったよ・・・あー、でも・・・そっか
 この『満座石』を誰かに売ってその人の魂を悪魔に転売すればいいんだ
 そっか、いいこと聞いたぞ〜♪
 ・・・・ちょっと待てよ?
 でも、売るためには次の人にキーワードを渡さなきゃならないじゃん
 っつーことは、パスワードが必要ってことになるな・・・・
 次のパスワードってどうすりゃ手に入るんだろ?
 前の人はどうしたのかな?
 この『満座石』のどっかに書いてないかな?
 こうやってこすったら出てくるとか・・・」

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン♪」

「うわっ!!なんか出てきたっ!」

「出てきたじゃないっしょ、ご主人さま♪
 よくぞこすってくれました!
 これでアナタにも復活のチャンスが生まれましたー♪」

「えっ?ハクション大魔王?てか、復活出来るのオレ?」

「ハクション大魔王じゃねーよっ!あれはアニメの話
 あたしゃ、アラジン知ってるでしょ?アラジン。
 あれに出てくるランプの精、ジーニーの弟でジーサーンっつーの。
 ちなみにあたしの下はジーヨーン、ジーゴーって続くんだけどね。
 まっそんなことはどーでもいいや。
 あれでしょ?次のパスワードでしょ?分かってるって
 いったんは売れたけど落ちぶれたんでしょ?ねっ
 わーーーーってるって。全部。
 みーーんなそうやってきたんだからさ
 きよしも竜介もやっさんもね。
 でもね、勘違いしちゃダメだよ
 この『満座石』で売れるきっかけを得られるのは一回だけ。
 だからはっきり言っちゃうけどアナタはもう売れることはないの
 でもねパスワードさえあれば復活はできる。
 まっ復活ったって魂をもいっかい手に入れるだけだけどね。
 で、ぶっちゃけ売れるのは魂を売ってない方。
 つまり、これと引き替えに魂を売っちゃった方はいわば人身御供
 だって、魂ないんだよ?売れるわけないでしょ?
 だから、アンタは落ちぶれて当然なの。
 よーするに、コンビで売り出したんだったら、最後までコンビを組んでないとだめなの
 仲間を大切にしょーよっつーありがたーい教えも込められてるの。
 この『満座石』には。
 で、ついでに言っておくけど、漫談とかの一人で魂を売っちゃった人は
 必ず落ちぶれるからね。
 相乗作用がないからなんだけど、まっそこまで話すとキリがないから・・・

 とにかく、ねっ分かった?
 でもさ、一時はいい夢が見れたんだからいいでしょ?
 で、今パスワードを教えるから、それでこの『満座石』を売りなさい
 で、魂を取り戻して、まっとうな生活に戻りなさい。ねっ。
 分かった?」

「・・・・・」

「ハイは?」

「・・・・ご主人さまとか言っといて、ずいぶん態度がでかくね?」

「何ブツブツ言ってるの?んなこと言ってるとどっか行っちゃうよー
 いいの?それでもいいんだね?ご主人サマ」

「え、いや、その、、分かった、いや、分かりました。はい」

「そ。そーやって最初から素直にしてりゃアタシだって気分良くパスワードを教えられたのに
 まっいいや。はい、パスワードは【a miracle】ね」

「【a miracle】ってミラクル?オレたちのキーワードじゃん
 あっ!そーいえばオレたちのパスワードは【a mutter】だったっけ
 これって『つぶやき』だ。
 あーあの人はつぶやきシローさんだ・・・どっかで見たことあるとは思ったんだよな〜
 そーいえば、しゃべりも北関東なまりっぽかったし、ぶつぶつしてたわ・・・
 そっか、あの人のキーワードは『つぶやき』だったんだ。
 で、漫談で一人だったから落ちぶれたってことか・・・。
 んでもって、あーやってまた魂を取り戻そうとしてたのか。
 そっか、そっか、やっと色んなことが見えてきたわ。
 うん、分かったよ、これを売ってまっとうな生活に戻るよ
 ありがとう、ハクション大魔王♪」

「ちっげーよ!ハクション大魔王じゃねーよっ!いっこも聞いちゃいねえし
 んじゃアクビちゃんはどこにいるんだっつー話になるでしょ?
 ジーサーンだよっジーサーン。ちゃんと『サーン』って伸ばしてよ
 じゃないと、年寄りになっちゃうからさっ。
 まっいっか。二度と会うこともないし。
 んじゃ、がんばってね〜♪」

◇                  ◇

「へへへへ、復活できる♪
 大魔王は、あーは言ってたけど、オレには悪魔さんっつー強い見方がいるもんね
 とりあえずは、どっかでこの『満座石』を売って、それで手に入れた誰かの魂を
 今度は悪魔さんに売れば・・・・」

◇                  ◇

「さぁさぁお立ち会いっ!
 ご用とお急ぎでないかたは、ちょーっと見てってちょーだいっ!
 ここに取りぃ出したる石っ
 そんじょそこらの石とは・・・・」

◇                  ◇

ジーサーン
「ねっ?こーすればさ簡単に永久に魂を確保できるでしょ?悪魔さん。
 どーせアタシたちにとっちゃ奇跡を起こすことなんて
 朝飯前なんだからさ ほら見てごらん、また新しい魂が・・・・」


==================================
楽しんで読んで頂けましたらクリックをお願いします♪
ネット小説ランキング>現代コミカル部門>「ミラクル」に投票

その他のカテゴリー

最近のコメント

2009年3月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

最近のトラックバック